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なぜ田舎の古古民家は丈夫なのに、町屋は地震に弱いものが多いのか
阪神・淡路大震災や能登半島地震では、多くの古い木造住宅が被害を受けました。
その中でも、商店街に残る町屋では、道路側が店舗となっているため壁が少なく、筋かいもほとんど入っていない建物が多く見られました。一方で、同じ時代に建てられた田舎の古古民家には、大きな被害を免れたものも数多くあります。
もちろん、すべての町屋が弱く、すべての古民家が強いというわけではありません。しかし、その違いには建物が造られた「目的」の違いが大きく関係しています。
家を守るための建築と、商売を守るための建築
田舎の古古民家は、農地や山林とともに何世代にも受け継ぐ「家そのものが財産」でした。
そのため、
- 良質な木材を惜しみなく使う
- 太い柱や大きな梁を組む
- 大きな礎石やしっかりした地盤を選ぶ
- 将来の修理や増改築を見据えて造る
など、長く住み続けることを前提に建てられています。
一方、町屋は商売を行うための建物です。
道路側は店として開放し、多くのお客様が出入りできることが最優先でした。そのため、店舗部分には壁が少なく、大きな開口部が設けられ、現在の耐震設計から見ると偏った構造になりやすかったのです。
地震よりも火災への備えが重要だった
昔の町では火災が非常に多く、「火事と喧嘩は江戸の華」と言われるほどでした。
建物はいつか焼失する可能性があるという考え方もあり、耐震性よりも、修理や建て替えのしやすさが重視されることも少なくありませんでした。
一方、田舎では大火災の危険性は比較的少なく、「家を何百年も残す」という考えが受け継がれてきました。
地盤の違いも大きい
田舎の古古民家は、山裾や自然堤防など比較的安定した土地を選んで建てられている例が多くあります。
一方、町は川沿いや埋立地、湿地を造成して発展した地域も多く、地盤条件の違いが建物の被害に影響したケースもあります。
現代の耐震診断で分かること
私たちが古古民家の耐震診断を行うと、意外にも骨組みそのものは非常に健全な建物が少なくありません。
一方で、町屋では店舗として使われていた正面に耐力壁がほとんどなく、建物全体の重心と耐力の中心がずれる「偏心」が大きくなり、地震時にねじれるような力を受けやすい建物も見られます。
これは建築技術が劣っていたからではなく、それぞれの建物が担っていた役割の違いによるものです。
古古民家だからこそ100年住宅へ
古古民家には、何世代にもわたって使い続けられてきた丈夫な骨組みがあります。
その骨組みを活かしながら、現代の耐震技術・断熱技術・気密技術を組み合わせることで、快適で安全な「100年住宅」へと生まれ変わらせることができます。
私たち持田建築は、単に古い家を直すのではなく、先人が残してくれた価値ある建物を次の世代へ受け継ぐためのリノベーションをご提案しています。
古古民家は、過去の遺産ではありません。未来へ受け継ぐことのできる、大切な資産なのです。
廻り縁が多くても強いのはなぜ?
屋根が建物全体をつないでいるから
出雲の在郷屋は、前面や西側に広い縁側が設けられているため、壁量だけを見ると偏心が大きく、不利な建物に見えます。
しかし、実際には長い年月を経ても残り続けている建物が少なくありません。
その理由の一つとして考えられるのが、屋根面全体の剛性です。
現代の住宅では、構造用合板によって床や屋根の剛性を高め、地震力を耐力壁へ伝えています。
一方、在郷屋では、太い梁や母屋、棟木、密に並ぶ垂木、野地板、さらに重量のある瓦屋根が一体となり、屋根全体が大きな構造体として働いていると考えられます。
さらに、深い軒や縁側の屋根が外周部の柱と強く結ばれることで、屋根面の変形が抑えられ、偏心によって生じるねじれを緩和する働きにも寄与している可能性があります。
これはヨーロッパ建築のフライング・バットレスと同じ構造ではありませんが、建物の外周部で水平力を受け止め、建物全体の変形を抑えるという点では、よく似た力学的な考え方といえるでしょう。
古い建物は、壁だけで地震に耐えているのではありません。
屋根、小屋組、梁、柱、差鴨居、貫、そして縁側までもが一体となって力を受け持つことで、現代の耐震計算だけでは表しきれない「木造の粘り強さ」を生み出しているのです。